3億年前の地上に登場した原始の植物
年代など本当のところは誰にもわかりませんが最初の植物が苔かそれに類するものであったというのは恐らく確実であろうと思われます。
現在の地球において3億年前の地球の姿にもっとも近い場所としてアイスランドの原野(※写真下)を挙げる地質学者は多くいますがそれは、アイスランドが火山活動により1600万年前にできた非常に新しい島だからです。
アイスランドの原野は尖った岩と苔のシンプルな世界。3億年前の地表はアイスランドの原野のような見渡す限り岩と苔と水の世界だったと推測されます。
苔植物*は世界に約2万5000種、
この時点では、苔以外の植物はたとえその種子が運ばれてきたとしても生育不可能です。
苔かそれに類する植物のみが溶岩石と雨水だけで形成された文字通りの「死の大地」に最初の命を宿すことができます。

溶岩石の大地の上に覆いかぶさるように苔の大地が広がり、次第に厚みを増し裸子植物や被子植物など別の植物の種子が根付くことのできる土壌が完成します。苔植物が「地衣類」と呼ばれるのはそのためです。
そしてまず現れたのはシダやマツのような裸子植物であったようです。
このように考えると、盆栽の典型として多く見られる「マツ・石・苔」の組み合わせは原初の陸地を表現しているというわけです。
盆栽が始まった平安時代の頃にこのような科学的知見があったのかは定かではありませんが、盆栽を知る上でこれはとても興味深い事実です。
*苔植物(こけしょくぶつ):学術用語で苔類(たいるい)・蘚類(せんるい)・ツノゴケ類(つのごけるい)を含む植物の総称。

街中のコンクリートやアスファルト舗装のように無機質な場所に苔植物が繁茂するのは苔の持つ役割から考えるとごく自然な営みであることがわかります。このような砂地や岩場は植物界が生育域を広けるための最前線です。市街地の苔植物は人間が灰色に塗り固めた大地をもう一度、植物界に取り戻そうとしているかのようです。
苔の不思議
2017年。冒険家で著作家のエハン・デラヴィ氏はアイスランドの原野 633kmを 33日間かけて歩いたそうです。
当初、彼は一面尖った岩だらけの原野を裸足で縦断しようと考えていましたが、それは最初の少しだけで断念せざるを得ませんでした。あまりにも荒々しい岩肌であったため彼の足の裏は瞬く間に傷だらけになり、出血し、歩行が困難になったからです。やむおえず薄手のカーボンソール靴に履き替え旅を続行したそうですが、岩肌を苔が覆った部分ではできる限り裸足で歩いていたのだそうです。
苔の上を裸足で何時間も歩いていると、彼の心は不思議な感覚になりました。それは非常に右脳的、感覚的な状態で変性意識に近かったそうです。岩場を歩いているときはそのような感覚にはならなかったといいます。
このことについて科学的検証も行われていませんし、そもそも苔の上を歩行したことが直接の原因かも不明です。
また、この口述より詳細な状況はまだわかりません。しかしこれが苔由来の効果であるとしたら、それは今まで誰も発見していなかった苔の性質ではないでしょうか?
映画「Why on Earth」
映像の構成要素のほとんどが苔!岩!水!
冒険家・著作家、エハン・デラヴィ氏の
アイスランド縦断ドキュメンタリー
公式Website:http://earthling-jp.org/why-on-earth/